Column#30 - Field notes ― 祈りを渡す。鎌倉-東京-長崎をめぐる旅の手前で。
- 6月19日
- 読了時間: 4分
12月に開催する HUG FOR_. のプロジェクト Aoe にちなんだ展覧会「inori, tomoshibi, haruka」。
そして 来週から向かうチェンマイでの取り組みのキーワードにもなっている「祈り」という言葉。いま改めて祈りとは何なのかを問い直しながら、それぞれの取り組みをより深く理解し共有していきたいと思っています。
今日は 祈りについて、そして「美しく自生し 共生する日々への祈り」というコンセプトを軸にしたAoeのぼんやりとしている構想について綴りました。

祈りとは、何かを願うことだけではなく古くから共同体を支える営みとして存在してきました。
豊穣を願う
祭祀死者を弔い
儀礼災厄を遠ざけるための習わし
それらは超越的な存在への働きかけであると同時に、不確かな世界のなかで人が生き延びるための知恵でもありました。
目に見えないものに意味を与え、説明できない痛みや喪失を、共同体のなかで抱え直すための行為として。
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祈りとは人間が世界との関係を結び直すための、もっとも原初的な方法のひとつなのだと思います。
そしてそれは決して過去のものではなく、
いま、誰もが誰にも言えない痛みを抱えた夜、
いま、理不尽に傷つき孤立を感じる瞬間、
それでもなお明日に生きようとする気持ちとして、その小さな意志のなかにも祈りは確かに存在し、私たち一人一人が生きている証ともいえる時間のことだと思います。
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HUG FOR_. のプロジェクト Aoeは、そうした目に見えない祈りを、日々のなかにある祈りを、特別ではない祈りを、共感や表現を通してひらいていくために生まれました。
発端は、まずは私自身、自分を大切に想うがために始めたことです。それが結果として誰かにも届いていく。その可能性と循環の輪を信じながら場を育てています。
今年の冬、鎌倉でひとつの祈りの時間をひらきます。灯りと絵画と音楽が重なり合い言葉にならない感情や記憶をそっと照らす時間です。
それは完成された答えや解決を差し出すものではなく、それぞれが自分のなかにある祈りを見つめるための静かな入口のような時間になればと思っています。
そしてその祈りはひとつの場所だけに留まるものではなく、鎌倉という海辺の町で生まれた小さな灯りが都市のざわめきのなかへ運ばれて、さらに遠く、海を越えて受け継がれていけばいい。
そうして祈りは人から人へ、場所から場所へ時代を越えて静かに流れていくものなのかもしれないと感じています。これから、そのイメージを形にするために、時間を鎌倉、東京、そして長崎へと渡らせていきたいと考えています。
異なる風景を持ちながらどこか水辺でつながる三つの土地。
始まりの祈り(鎌倉)、共有する沈黙(東京)、受け継がれる光(長崎)
そんな流れを思い描きながら、Aoeはこれから少しずつひとつの場所にとどまることなく、土地ごとの記憶や気配に触れながら祈りのかたちを記録していきたい。
それは特別な誰かのためではなく、それぞれが自分の足で立ちながら、ときどき誰かとその静けさを分かち合うために。
美しく自生し共生する日々への祈りとして。
まずは、12月、鎌倉でみなさまにお会いできるのを心待ちにしています。
当コラムは月に1-2回程度、ギャラリーに関連する活動を軸に執筆しています。お気楽にお読みいただけますと幸いです。
文、写真:HUG FOR_. Eriko.O
Eriko OKUYAMA

大学卒業後、民間企業や外郭団体での勤務を経て、2016年からアート業界に転身。主に銀座、六本木、白金台、天王洲など都内の現代アートギャラリーにて展覧会の企画運営マネジメント、プロジェクトマネジメント、アーティストマネジメント、パブリックスペースのアートコーディネーションに従事。ライフワークとしては、芸術の社会的な役割を模索しながら障がいのあるアーティストの展示企画や実践研究に取り組んできました。鎌倉に移住後、地域交流や豊かな自然によって心身と暮らしが満たされていく実感と共に、改めて芸術の在り方そのものを再解釈し、自身とアーティストの自己実現へのチャレンジ、そして人々が真の幸福に向かう思考と体験を共有する場を創りたいという想いのもと、2022年12月にHUG FOR _ . を開業しました。
ギャラリーとして作品を販売し、運営を持続させていくことと、芸術が社会や人に対してどのように貢献し循環させることができるか、事業性と社会性の両輪の視点をもって活動をし続けています。ギャラリーやアートは、暮らしや私たちの内面にとても近い存在であると考えています。難しく考えずにお気軽に足をお運びください。
・筑波大学大学院 博士前期課程 人間総合科学研究科芸術支援領域 修了
・修士論文「共生社会の実現に向けたアートを通した交流活動」筑波大学茗渓会賞 受賞
・HUG FOR_. ホームページにて月に一度のコラムを連載


