Column#31 - 子どもとワークショップ、その本質を考える ― 表現することが、世界を知ることなら。
- 5 日前
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更新日:5 日前
子ども向けワークショップを考える。
先日、チェンマイのアーティストインレジデンスで子ども向けワークショップを実践した。その経験を振り返るなかで、いま、子どもを対象としたワークショップについて改めて深く考えるようになった。
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子ども向けのワークショップは、「楽しかった」「創造性が育つ」といった表層的な言葉で語られることが少なくない。しかし、教育的な意義を大切にするのであれば、それだけでは十分といえないだろう。
芸術に関わり、その価値を発信する私たちは、発達段階にある子どもたちへ提供する「経験」に対して責任を持たなければならない。
そのためには、多領域の知見を踏まえながら、「なぜ子どもにとって表現活動が重要なのか」を、企画・運営する側自身が探究し続ける必要がある。
そのうえで、ワークショップの内容も絶えず発展させていく必要がある。それは大人の意図や価値観を一方的に押しつけるのではなく、子ども自身の主体性や探究心を引き出す機会として設計することだ。それこそが、子どもたちにとって、更にはすべての関係者にとって本当に有意義なワークショップにつながるのではないかと感じている。
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アートを通じたワークショップとは「作品をつくること」よりも「広い世界を理解するための取り組み」と捉えるほうが、本質に近いのではないかと思う。
一般的に、ワークショップというと「かわいい作品が完成するイベント」という印象を持たれがちだ。しかし、教育や発達心理の観点で見ると、その価値は完成した作品そのものではなく、制作に至る「考える過程」にあると考えられている。
子どもたちは手を動かし、素材に触れ、試行錯誤を繰り返す。
そのなかで「なぜこうなるのだろう」「別の方法はないだろうか」と自分なりの仮説を立て、試し、修正していく。このプロセスは、表現活動であると同時に、科学的な探究の姿勢にも通じる学びである。
さらに、アートには「正解」がない。
「どうしてこの色を選んだの?」「どうしてここだけ形が違うの?」「何をつくりたいと思ったの?」
さまざまな対話を重ねることで、子どもは自分の考えを言葉にし、他者との違いを知り、それを受け入れる経験を積み重ねていく。作品について語ることは、自分自身について語ることでもある。
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近年は、OECD(経済協力開発機構)も、「創造性」「協働」「問題解決能力」といった資質・能力を、知識と同様に重要なものとして位置づけている。変化の大きな現代社会において求められるのは、知識を蓄える力だけではなく、自ら問いを立て、考え、他者と協働しながら新しい価値を生み出す力だからだ。
そう考えると、アートを通じたワークショップは、単に絵を描いたり造形したりする時間ではなく、子どもが自分自身や他者、そして世界との関わりを探究する、小さな研究室のような場として成立させていくことにたどり着く。
完成した作品はゴールではない。それは、子どもがその時間に考え、迷い、発見したことの軌跡の形である。
HUG FOR_.では、対話型鑑賞会を軸としながら、子ども向けのアートワークショップも定期的に開催していきたい。それは一般的なワークショップからもう一歩踏みこんだ、作品をつくることだけを目的とするのではなく、対話し、考え、試し、自分なりの答えを見つけていく。その過程を大切にできる場を育んでいきたいと思う。
※本稿は、ジャン・ピアジェの認知発達理論、ジョン・デューイの「Learning by Doing(経験による学び)」などの教育・発達理論を参考に執筆。
当コラムは月に1-2回程度、ギャラリーに関連する活動を軸に執筆しています。お気楽にお読みいただけますと幸いです。
文、写真:HUG FOR_. Eriko.O
Eriko OKUYAMA

大学卒業後、民間企業や外郭団体での勤務を経て、2016年からアート業界に転身。主に銀座、六本木、白金台、天王洲など都内の現代アートギャラリーにて展覧会の企画運営マネジメント、プロジェクトマネジメント、アーティストマネジメント、パブリックスペースのアートコーディネーションに従事。ライフワークとしては、芸術の社会的な役割を模索しながら障がいのあるアーティストの展示企画や実践研究に取り組んできました。鎌倉に移住後、地域交流や豊かな自然によって心身と暮らしが満たされていく実感と共に、改めて芸術の在り方そのものを再解釈し、自身とアーティストの自己実現へのチャレンジ、そして人々が真の幸福に向かう思考と体験を共有する場を創りたいという想いのもと、2022年12月にHUG FOR _ . を開業しました。
ギャラリーとして作品を販売し、運営を持続させていくことと、芸術が社会や人に対してどのように貢献し循環させることができるか、事業性と社会性の両輪の視点をもって活動をし続けています。ギャラリーやアートは、暮らしや私たちの内面にとても近い存在であると考えています。難しく考えずにお気軽に足をお運びください。


